歯周病は、歯の周辺組織である歯ぐき・歯根膜・歯槽骨・セメント質などを壊してしまうお口の病気です。歯ぐきに炎症が起こることからはじまり、次第に深部の組織まで侵食が進みます。初期では痛みなどの自覚症状がほとんどないまま進行し、ある程度進行すると歯ぐきから出血したり膿が出たりします。重度の歯周病になると、歯を支える骨まで溶かされてしまい、最終的には歯が抜け落ちてしまうことも……。
歯周病の原因
歯周病の原因には、お口の中に存在する歯周病菌をはじめとし、さまざまなものがあります。大きく次の3つの要因によって発症すると考えられます。
1.口腔内環境の悪化 | 2.不正咬合(悪い咬み合わせ) | 3.免疫力の低下や全身疾患 |
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お口の中が不衛生だと、歯周病菌が棲み家とするプラークや歯石が溜まりやすくなります。 |
咬み合わせが悪いとブラッシングしづらくなり、原因となるプラークや歯石が溜まりやすくなります。 |
糖尿病をはじめとして、免疫力・抵抗力が低下する全身疾患によって、歯周病が発症することがあります。 |
進行段階 | 症状 |
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歯ぐきに炎症が起きている状態。ブラッシングの際などに出血しやすくなります。歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の溝)の深さは、3mm程度です。 | |
顎の骨が溶けはじめた状態。歯ぐきが腫れ、ブラッシングの際に出血が見られるだけでなく、冷たい水がしみたり、口臭が出たりします。歯周ポケットの深さは、4mm程度です。 | |
顎の骨が半分くらい溶けた状態。歯を指で押すとグラつきます。歯ぐきの腫れや出血に加え、歯が浮くような感じがしたり、口臭が強くなったりします。歯周ポケットの深さは、6mm程度です。 | |
顎の骨の3分の2以上が溶けた状態。歯のグラつきがひどくなります。歯ぐきが下がり歯根が露出し歯が長く見えたり、歯と歯ぐきの境目から膿が出て口臭がよりきつくなったりします。この状態を放置すると、最悪の場合、歯が抜け落ちます。歯周ポケットの深さは、8mm程度と非常に深くなります。 |
歯周病治療には段階によりさまざまなものがあります。進行段階に合わせた治療を選択するため、検査を行います。
歯周ポケット検査 | 「プローブ」というものさし状の器具を用いて、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)の深さを調べます。深ければ深いほど、歯周病が進行しています。 |
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歯の揺度検査 | ピンセット状の器具で歯をつまんで動かし、グラつき度合いを調べます。グラつきが大きいほど、歯周病が進行しています。 |
レントゲン検査 | 顎の骨の状態をレントゲン撮影にて調べます。骨密度が低いほど、歯周病が進行しています。 |
おもに、ごく初期の歯肉炎に対して行います。一人ひとりのお口の環境に適した正しい歯磨き方法を指導します。 ※歯磨きは歯科医院での治療と合わせて行うご自宅でのケアとなりますので、継続して指導することがあります。 |
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比較的軽度な症状の歯周病に対して行います。「スケーラー」という器具を使って普段の歯磨きでは取り除けない、歯に付着したプラークや歯石を除去します。 | |
スケーリングで除去しきれなかった、歯周ポケット奥深くにこびり付いたプラークや歯石を「キュレット」という器具を用いて除去します。同時に、スケーリング後のザラついた歯面をなめらかに仕上げることで、汚れの再付着を防ぎます。 | |
軽度~中等度の歯周炎に対して行う外科的処置です。局所麻酔を行って歯周ポケット内のプラークや歯石、膿、感染した組織を除去します。 | |
中等度以上の進行した歯周炎に対して行う外科的処置です。局所麻酔をした後に歯ぐきを切開して顎の骨からはがし、露出した歯根に付着しているプラークや歯石を除去します。また、感染した組織も取り除きます。 |
再生療法
溶けてしまった顎の骨は放っておいても正常に再生しないため、特殊な処置を行います。
溶かされた顎の骨や歯根膜などの歯周組織を再生させる再生療法の一種です。歯ぐきを切開して歯石を取り除いてできた空間に特殊な膜「メンブレン」を挿入し、歯肉の侵入を防ぎながら骨や歯根膜などの歯周組織の再生を促します。 | |
GTR法と同様に、溶かされた顎の骨や歯根膜などの組織を再生させる再生療法の一種です。「エムドゲインゲル」という薬剤を歯根の表面に塗ることで歯が生えるときと同じような状況をつくり出し、歯肉の侵入を防ぎながら骨や歯根膜などの歯周組織の再生を促します。 |
歯周病は、日本人の成人の約8割が疾患者、もしくはその予備軍だと言われ、多くの方が感染している可能性の高いお口の感染症です。
初期の歯周病は自覚症状がほとんどありません。そのため、症状に気がついたときには、すでに重症となっていることが少なくありません。症状を見逃し治療せずに悪化させてしまうと、最終的に歯を失うことも……。事実、日本人が歯を失う原因の第一位は歯周病なのです。
また、歯周病のおそろしさには、全身の疾患やトラブルにも関係していることも挙げられます。歯周病菌が体内へ入り込み、血流に乗って体内をめぐるうちに血栓を作りやすいことから心筋梗塞・脳梗塞など命に関わる疾患を引き起こすことがあります。また、気管に入り込むと肺炎の原因にもなります。
さらに注意が必要なのが、糖尿病の方、妊娠中の方です。糖尿病と歯周病には相関関係があり、お互いを悪化させてしまうことがあるのです。また、妊娠中はホルモンバランスの変化によって歯周病を発症しやすくなっており、歯周病を発症すると早産や未熟児出産に至る確率がそうでない場合に比べて約7倍にもなると言われています。
このように、歯周病はお口の中だけの問題ではありません。気になる症状が少しでもありましたら、できるだけ早いうちにご相談ください。
「毎日時間をかけて磨いているのに歯周病になってしまった」
このようにお悩みの方も、いらっしゃるのかもしれませんね。歯ぐきが腫れたり、出血したりするといった歯周病の原因は、歯についた汚れであることがほとんどです。もしかしたら、歯ブラシの使い方が少し違うのかもしれませんね。個人個人で、効果的な歯ブラシの当て方、糸ようじ、歯間ブラシの使い方は異なります。一度、専門的なブラッシング指導を受けてみましょう!
当院では上記検査方法に加え、必要に応じて位相差顕微鏡による細菌検査を実施しております。
歯周病は細菌感染症ですので、その細菌叢は個々の患者さんによって異なります。
位相差顕微鏡でお口のプラーク(歯垢)をよく観察することで、治療方法、治療後の予後の想定や、メンテナンスの時期、生活指導などに役立つ情報を得る事ができます。あまり気持ちの良いものではありませんが、一度ご自分のお口の中に住んでいる微生物達を一緒に観察しましょう。